世界的な地政学リスクの高まりに伴い、防衛需要や重要鉱物の供給制約がタングステン市場に影響を与えています。超硬工具の主原料であるタングステンを巡る環境変化と、日本の製造現場に求められる対策を解説します。
タングステンは全金属の中でトップクラスの極めて高い融点を持ち、金と同等の高い密度(約19.3 g/cm³)を備えています。この高密度という特性を活かし、防衛分野では敵の装甲を貫く「徹甲弾(砲弾)」の貫徹体などに採用されてきました。
さらに、耐熱性が要求されるミサイルやロケットなどの高温環境にさらされる一部の部品、あるいは各種精密構造部材など、特定の防衛装備品において重要な材料となっています。
世界各地での情勢変化に伴い、弾薬消費や装備品の補充、自国の安全保障上の備蓄を強化する動きが広がっています。これにより、防衛用途におけるタングステンの重要性が改めて認識されており、市場の需給関係を引き締める一因として指摘されています。
タングステンは世界の鉱山生産量の多くを中国が占めており、特定国への供給依存度が極めて高い鉱物資源です。近年、中国による輸出管理・規制の強化や国内での生産上限設定、さらには中国国内需要の増加などが重なり、世界的な供給タイト感が強まりました。
こうした供給制約に対し、防衛産業や先進技術分野での需要増加が重なったことが、タングステン国際価格の上昇を招く大きな要因となっています。
原料価格の上昇や国際的な需要競争の高まりを受け、国内における超硬エンドミルやインサートチップ、金型用超硬素材などの超硬工具・素材についても、仕入れ価格の上昇や調達リードタイムの長期化といった影響が及ぶ可能性が懸念されています。
対策として極めて有効な選択肢が、使用済み超硬工具(エンドミル、ドリル、チップなど)や製造工程で発生するスラッジ(研磨粉)の回収とリサイクルです。
超硬スクラップはタングステンを高い割合で含むため資源的価値が高く、国内で実用化されている「亜鉛処理法」や「化学処理法」などの技術によって再資源化が可能です。なお、亜鉛処理法では元の組成を維持して再生されるため、現場での適切な分別管理が重要となります。確実な回収体制を整えることで、調達リスクの低減や資源の有効活用につながる可能性があります。
単一の供給網に依存せず複数の調達ルートを意識するとともに、加工条件や被削材に応じて、タングステン使用量を抑えた材種や、サーメット・セラミック工具などの代替品を検討することも有効です。ただし、工具の変更は切削条件や工具寿命、加工精度に直結するため、被削材や目的に応じた適切な選定が必要です。
超硬工具の原料であるタングステン市場は、中国への供給依存や輸出規制、さらには世界的な防衛需要の拡大といった複合的な要因により、供給リスクや価格変動に晒されています。
日本のモノづくり現場においては、特定の要因のみにとらわれず、サプライチェーン全体のリスクを把握することが重要です。社内での超硬リサイクル(分別回収)の徹底や、代替材種の検討などを通じ、外部環境の変化に柔軟に対応できる安定調達体制を構築していくことが求められます。
引用元:トーカロイ公式HP(https://www.tokaloy.co.jp/)
引用元:ノトアロイ公式HP(https://www.notoalloy.co.jp/)
引用元:シルバーロイ公式HP(http://www.silveralloy.co.jp/jp/index.htm)