コバルト(WC-Co系)

目次

コバルト(Co)は、超硬合金の原料です。このページでは、コバルトを結合剤とするWC-Co系超硬合金の特性や用途、製造方法など、基礎知識を解説します。

コバルト(WC-Co系)
超硬合金の特性は?

コバルト(WC-Co系)は一般的な超硬合金で、炭化タングステン(WC)を主成分とし、結合剤にコバルト(Co)を使用している複合材料です。

炭化タングステン(WC)が高硬度と耐摩耗性の特性を持ち、コバルトを添加することで靭性が増し、衝撃や圧力への抵抗力が備わります。切削工具や耐摩耗部品、高温構造体など、様々な産業で活用されています。

硬度・強度・耐摩耗性

コバルト(WC-Co系)は、ビッカーズ硬度1,200~1,800HV(※)の高硬度を保ちつつ抗折力は1.0〜4.0GPaと、硬度・強度・耐摩耗性を合わせ持っています。

コバルトの含有量は3~30%の範囲で、比率が増えると硬度は低下する点が特徴。比率によってJIS規格で分類されているため、用途に合わせて強度の選択が可能です。

※参照元:日本ハードメタル(https://www.nhm.co.jp/technical_info/whatis/)

靭性・ヤング率

破壊靭性はコバルトの比率が増加するほど高くなり、炭化タングステン粒径にも比例して高くなります。

ヤング率はコバルトの比率が減少するほど高くなり、炭化タングステン粒径に左右されません。

耐熱性

熱膨張率が低いため、熱による変形が少ない点が特徴。高温域でも強度を維持でき、高速切削においても安定した加工性能を発揮できます。

コバルトの比率が増加するほど、熱膨張率も高くなります

耐酸化性

コバルトは約300℃から酸化が始まり、炭化タングステンは約600℃から酸化が急激に進むことにより腐食が発生します。
その場合、コバルトの比率を下げる、またはニッケル(Ni)を添加することで耐食性を向上させることが可能です。

耐薬品性

炭化タングステンは耐薬品性が高く、「水・塩酸・硫酸」に反応しません。コバルトは塩酸や硫酸に強く、希硫酸には溶解します。
アルカリ、中性・酸性溶液においては、コバルトが溶け出すコバルト溶出を促進する場合があるため、注意が必要です。

原料の含有量・組み合わせで
超硬合金の特性は変わる

WC-Co系超硬合金は高硬度と高靭性を両立し、「硬いのに欠けにくい」という特性を持ちます。
コバルトの含有量と炭化タングステンの粒径によって、硬度・靭性・ヤング率といった特性が変わるため、利用する場合は原料の数値を確認しましょう。

超硬合金メーカーには、それぞれに特徴があり、扱う材種も異なります。本サイトでは、業種別によくある課題を解決できる超硬合金メーカーを紹介しているので、サプライヤー選定や課題解決の一助としてご活用ください。

コバルト(WC-Co系)
超硬合金の主な用途

コバルト(WC-Co系)超硬合金は、高硬度と高靭性を両立していることから、以下のような製品や環境で多く使用されています。

 
自動車・航空機・金属加工業界 切削工具(切削用チップ・ドリル・エンドミルなど)
建設・土木 トンネル掘削機のカッターヘッド・道路切断工具
鉱業 鉱山用ロックドリル部品
食品・自動車業界 精密プレス金型・鍛造金型
電子機器・半導体業界 電子機器部品の製造

本サイトでは、超硬合金の用途についてまとめていますので、ご参照ください。

コバルト(WC-Co系)
超硬合金の製造方法

コバルト(WC-Co系)超硬合金の製造は、主に以下の工程で行われます。

  1. 炭化タングステンとコバルト、必要に応じて添加物を選択し配合。
  2. 原料粉末を均一に混合・粉砕。
  3. 混合した粉末を乾燥させ、適切な粒度の造粒体を作成。
  4. 造粒した粉末をプレス成形し、圧粉成形をする。
  5. 形状安定性を高めるため、低温で予備焼結を行う。
  6. 加工済みの成形体を、予備焼結より高い温度で実施。
  7. 必要に応じて研削やコーティングなどの仕上げ加工を実施。

コバルト(WC-Co系)
超硬合金の特徴

コバルト(WC-Co系)超硬合金の代表的な特徴をご紹介します。

▼左右にスクロールできます。
高硬度と耐摩耗性 炭化タングステンとコバルトにより、高硬度を実現。
炭化タングステン粒子を微細化することで、さらに硬度・強度が上昇します。
高い靭性 コバルトを結合剤とすることで、炭化タングステン粒子間の隙間を埋め、全体の靭性を高めます。
高硬度でありながら、衝撃や振動に対する耐性も持ち合わせています。
低熱膨張と熱衝撃耐性 熱による寸法変化が小さいため、高精度な加工や組立が求められる部品に適しています。

コバルト(WC-Co系)と
炭化タングステンの違い

炭化タングステンは高硬度を持っていますが、衝撃や急激な力に対しては脆いという弱点があります。

コバルトを加えることで、硬度は若干下がるものの、靭性と曲げ強度が向上。切削工具や掘削ビットなど、衝撃・熱衝撃が伴う高負荷工程に向いている材種へと変化するのです。

コバルト(WC-Co系)のまとめ

コバルト(WC-Co系)超硬合金は、結合剤となるコバルトの含有量や炭化タングステン粒子の粒径を調整することで、用途に応じた特性を得られます。自社の加工課題に対し、どのような配合比率が適しているか、設計することが重要です。

工具や部品の素材から見直しを検討されている方は、本サイトの「課題別おすすめメーカー」情報をご活用ください。

【業種別】超硬合金メーカー3選
大量生産に対応する 自動車部品・金型メーカー
向け
トーカロイ
トーカロイ
引用元:トーカロイ公式HP(https://www.tokaloy.co.jp/)  
高刃立ちの素材で、切断品質と
寿命を両立し大量生産に応える

超々微粒子構造と最大HRA95.0の高硬度設計により、大量生産を行う環境でも切削品質が長時間持続。工具交換頻度の抑制による高稼働で生産性向上が可能。

金型の寿命を約55倍、刃物の寿命を約100倍に改善(※)した実績があり、工具の交換頻度を軽減。

大型・重量部品を扱う 構造部品メーカー
向け
ノトアロイ
ノトアロイ
引用元:ノトアロイ公式HP(https://www.notoalloy.co.jp/)
重量・長尺の超硬部品にも対応する
大物加工の頼れる選択肢

外径φ500mm、長さ1,000mmに対応する大物超硬加工設備を備え、重量物や長尺・高荷重部品の加工をピンホールが除去された高品質で提供できる。

他社で断られることの多い、重機部品における金型の大型化・複雑形状に応える供給体制を整備。

非磁性・クリーン対応が必須な 医療・分析機器メーカー
向け
シルバーロイ
シルバーロイ
引用元:シルバーロイ公式HP(http://www.silveralloy.co.jp/jp/index.htm)
非磁性で高硬度・高強度を両立
磁場に左右されない精密超硬材

医療・電子・真空機器などで、非磁性かつ高硬度・高耐蝕性が必要な環境に対し、非磁性超硬合金を提供。

非磁性と塩分・化学薬品に対する高耐蝕性、HRA90.8・抗折力約4,400MPaの強度により、磁場干渉や薬液劣化を防ぎ、精密部品の高寿命化に寄与。

※参照元:トーカロイ公式HP(https://www.tokaloy.co.jp/proposal