ドリル(ドリル・ビット)

目次

ドリル・ビットは、金属・コンクリートといった穴をあける対象物や穴のサイズなど、用途に合わせて様々な種類があります。用途に適した素材や形状を選ぶことで、現場の効率を高め、生産性向上を目指すことが可能。

このページでは、超硬合金で作るドリル・ビットの種類、メリット・デメリットをご紹介します。

超硬合金で作る
ドリル・ビットとは

超硬合金製の特性である「硬さ」と、結合剤に由来する「靭性」を兼ね備えた工具です。金属部品やその他の硬質材料に対する穴あけ加工において、従来の工具では対応が困難だった領域でも、優れた性能を発揮します。

超硬合金で作るドリル・ビット
のメリット・デメリット

ドリルやビットの素材として超硬合金を用いることには、明確な利点がある一方で、留意すべき点も存在します。
用途や加工対象に応じて適した工具を選択するためには、超硬合金の特性を多角的に理解することが不可欠です。

以下に、超硬合金製工具の主要なメリットとデメリットを具体的に解説します。

超硬合金で作ることのメリット

メリットは、耐摩耗性と長寿命化です。超硬合金は、一般的な鋼材やハイス(高速度鋼)よりも硬度が高いため、切削時の刃先の摩耗を大幅な抑制が可能。

繰り返し加工においても寸法精度を維持しやすく、生産ロスの削減に繋がります。ステンレス鋼、チタン合金、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)といった、難削材に対しても安定した加工性能を発揮。

切削時に発生する熱に対する耐性も高いため、被削材や工具の熱膨張に起因する加工誤差を低減します。

超硬合金で作ることの
デメリット

デメリットは、導入・運用コストの高さです。超硬合金は原材料価格が高価であることに加え、製造・加工には専用の設備や高度な技術が要求されます。そのため、初期投資額や工具単価は他の素材と比較して割高になる傾向にあるのです。

極めて高い硬度を持つ反面、靭性が比較的低いため衝撃に弱く、折損のリスクも持ち合わせています。

自社に合った超硬合金製
ドリル・ビットを選ぶ

高硬度と靭性により、耐摩耗性に優れ、難削材の精密加工を可能にする一方で、導入コストや衝撃への配慮も必要です。メリット・デメリットを総合的に理解した上で、自社の状況に適した製品を選定しましょう。

超硬合金製ドリル・ビットの導入や特注製作を検討する際には、既存のドリル・ビットにおける摩耗進行速度、早期のチッピングや折損といった工具損傷の状況、加工精度や寿命に関する具体的な課題を詳細に分析・把握することが不可欠です。

本サイトでは、業種別によくある課題を解決できる超硬合金メーカーを紹介しているので、サプライヤー選定や課題解決の一助としてご活用ください。

超硬合金ドリル・ビットの規格

ドリル・ビットを始めとする切削工具用の超硬合金材種を選ぶ際は、JIS B 4053を参考にするとよいでしょう。これは、被削材(加工対象の材料)や加工条件に応じて分類し、適切な呼び記号を付けるための規格です。

使用分類記号の数字が小さいほど耐摩耗性が高く、仕上げ加工に適しています。数字が大きいほど靭性(じんせい:割れにくさ)が高く、荒加工に適しています。

▼左右にスクロールできます。
     
識別記号・識別色被削材使用分類記号
P種(識別色:青) 鋼: 鋼,鋳鋼(オーステナイト系ステンレスを除く。) P01・P05・P10・P15・P20・P25・P30・P35・P40・P45・P50
M種(識別色:黄) ステンレス鋼:オーステナイト系、オーステナイト/フェライト系、ステンレス鋳鋼M01・M05・M10・M15・M20・M25・M30・M35・M40
K種(識別色:赤) 鋳鉄:ねずみ鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、可鍛鋳鉄 K01・K05・K10・K15・K20・K25・K30・K35・K40
N種(識別色:緑) 非鉄金属:アルミニウム、その他の非鉄金属、非金属材料 N01・N05・N10・N15・N20・N25・N30
S種(識別色:茶) 耐熱合金・チタン:鉄、ニッケル、コバルト基、耐熱合金、チタン及びチタン合金 S01・S05・S10・S15・S20・S25・S30
H種(識別色:灰) 高硬度材料:高硬度鋼、高硬度鋳鉄、チルド鋳鉄 H01・H05・H10・H15・H20・H25・H30

※参照元:日本産業規格の簡易閲覧(https://kikakurui.com/b4/B4053-2013-01.html )

JIS規格以外にも、ISO規格(国際規格)・工具メーカー独自規格があるため、特定のドリル・ビットの仕様や適用範囲については、各メーカーのカタログや技術資料を参照することが重要です。

超硬合金ドリル・ビットの種類

▼左右にスクロールできます。
ストレートシャンクドリル シャンク(軸)がまっすぐな円筒形。汎用性が高く、小径~中径の穴加工に適しています。
テーパーシャンクドリル シャンクが円錐状。主に大型工作機械で使用され、剛性に優れています。
オイルホールドリル ドリル内部に冷却剤を通す穴(油穴)があり、深穴加工や高温材の加工に有効。
切りくず排出と刃先冷却に優れ、工具寿命が長くなります。
高送りドリル 専用の切れ刃形状により、高速加工が可能。
量産ラインや自動機などでの効率重視加工に適しています。
マイクロドリル・超小径ドリル 直径0.1mm以下も存在する超小径。時計・医療・電子部品などの精密加工に使用されます。
ステップドリル 一度に複数の穴径を加工可能。下穴加工と仕上げを1本で行えます。

用途によって超硬合金の材種は変更するべきです。本サイトでは、超硬合金の種類についても解説しているので、材料選定時の技術資料としてご参照ください。

超硬合金ドリル・ビットで
加工をする際の条件

超硬合金のドリル・ビットをつけて使用する際には、加工対象の素材特性を考慮して精密な加工条件の設定が求められます。

切削速度(Vc) 被削材の硬度により調整
送り速度(f) ドリル径に応じて変化
ドリル回転数(n) ドリル径・被削材によって調整
切削油剤 水溶性クーラントまたは不水溶性切削油
切込み量(ap) 穴あけ深さによってステップ加工を検討
比切削抵抗(kc) 加工難度を知る目安

被削材や加工内容に合わせた切削速度・回転数・送り速度のバランスを見極め、かつ切りくず処理や冷却手法にも工夫を凝らすことで、安定した生産と品質向上に繋がります。

【業種別】超硬合金メーカー3選
大量生産に対応する 自動車部品・金型メーカー
向け
トーカロイ
トーカロイ
引用元:トーカロイ公式HP(https://www.tokaloy.co.jp/)  
高刃立ちの素材で、切断品質と
寿命を両立し大量生産に応える

超々微粒子構造と最大HRA95.0の高硬度設計により、大量生産を行う環境でも切削品質が長時間持続。工具交換頻度の抑制による高稼働で生産性向上が可能。

金型の寿命を約55倍、刃物の寿命を約100倍に改善(※)した実績があり、工具の交換頻度を軽減。

大型・重量部品を扱う 構造部品メーカー
向け
ノトアロイ
ノトアロイ
引用元:ノトアロイ公式HP(https://www.notoalloy.co.jp/)
重量・長尺の超硬部品にも対応する
大物加工の頼れる選択肢

外径φ500mm、長さ1,000mmに対応する大物超硬加工設備を備え、重量物や長尺・高荷重部品の加工をピンホールが除去された高品質で提供できる。

他社で断られることの多い、重機部品における金型の大型化・複雑形状に応える供給体制を整備。

非磁性・クリーン対応が必須な 医療・分析機器メーカー
向け
シルバーロイ
シルバーロイ
引用元:シルバーロイ公式HP(http://www.silveralloy.co.jp/jp/index.htm)
非磁性で高硬度・高強度を両立
磁場に左右されない精密超硬材

医療・電子・真空機器などで、非磁性かつ高硬度・高耐蝕性が必要な環境に対し、非磁性超硬合金を提供。

非磁性と塩分・化学薬品に対する高耐蝕性、HRA90.8・抗折力約4,400MPaの強度により、磁場干渉や薬液劣化を防ぎ、精密部品の高寿命化に寄与。

※参照元:トーカロイ公式HP(https://www.tokaloy.co.jp/proposal