炭化チタン(TiC)

目次

炭化チタン(TiC)は、他の原料と組み合わせることで超硬合金を形成するセラミック材料です。
このページでは、炭化チタン(TiC)を含有するWC-TiC系超硬合金の特性や用途、製造方法など、基礎知識を解説します。

炭化チタン(TiC)を含む
超硬合金の特性は?

炭化チタン(TiC)はチタン(Ti)と炭素(C)で構成されており、耐摩耗性や耐熱性に優れた特性を持つセラミック材料です。

単体で超硬合金とならず、他の原料と組み合わせて使用される点が特徴。

一例として、炭化チタン(TiC)を含む超硬合金に、WC-TiC(TaC)-Co系超硬合金があります。炭化タングステン(WC)・コバルト(Co)に炭化タンタル(TaC)も添加して作られており、高硬度・耐摩耗性・靭性に加え、炭化チタン・炭化タンタルによって耐酸性が向上します。切削工具や耐摩耗部品など、様々な産業用途に用いられている超硬合金です。

WC-TiC(TaC)-Co系超硬合金を例に、特性を解説します。

硬度・強度・耐摩耗性

炭化チタンのモース硬度は2,800~3,200HV(※)で、高い硬度と耐摩耗性を持ちます。その特性を活かしたWC-TiC(TaC)-Co系超硬合金は、炭化チタンを添加することで硬度と耐摩耗性が向上します。

※参照元:METAL 3DP(https://met3dp.com/ja/titanium-carbide-powder-20240117/)

靭性・ヤング率

炭化チタンの含有率が多い場合、靭性が低下する傾向があります。しかし、微粒化や他の炭化物との複合化により改善が可能です。
炭化チタンを含有する超硬合金は高いヤング率を示し、剛性が高く、変形しにくい特性があります。

耐熱性

炭化チタンは高融点で高温下においても硬度の低下が少ないため、耐熱性に優れています。
炭化チタン含有比が高いほど熱伝導率が低下しますが、その分熱膨張差応力が減り熱疲労割れを抑制しやすくなります。

耐酸化性

WC-TiC(TaC)-Co系超硬合金は耐酸化性がありますが、温度域によって強さは変わります。600~800℃では酸化に強く、900 ℃以上は酸化速度が上昇するため対策が必要です。

※参照元:J-STAGE【PDF】(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jinstmet1952/40/3/40_3_211/_pdf/-char/ja/)

耐薬品性

炭化チタン(TiC)や炭化タンタル(TaC)の添加は、超硬合金の耐食性を向上させる効果があります。酸や塩基などの化学薬品に対して高い安定性を示し、腐食の進行を抑制。炭化チタンの添加により、WC-Co合金の耐食性が向上します。

原料の含有量・組み合わせで
超硬合金の特性は変わる

WC-TiC(TaC)-Co系超硬合金は、炭化チタンと炭化タンタルの含有率によって特性が変わります。耐酸性を重視するのか、靭性を重視するのか、目的に合わせた調整が重要です。

超硬合金メーカーには、それぞれに特徴があり、扱う材種も異なります。本サイトでは、業種別によくある課題を解決できる超硬合金メーカーを紹介しているので、サプライヤー選定や課題解決の一助としてご活用ください。

WC-TiC系超硬合金の主な用途

炭化チタン(TiC)を含有するWC-TiC系超硬合金は、以下のような用途で使用されています。

自動車産業・重工業・金型製造業 切削工具、旋盤工具
化学プラント・石油・ガス産業 耐摩耗部品、ポンプ部品
鉱業・建設業 鉱山・土木機械用工具
航空宇宙産業 高温部品の加工工具、耐熱部品の製造

本サイトでは、超硬合金の用途についてまとめていますので、ご参照ください。

WC-TiC系超硬合金の製造方法

炭化チタン(TiC)を含有するWC-TiC系超硬合金の製造は、主に以下の工程で行われます。

  1. 原料の準備:炭化タングステン・炭化チタン・コバルトを所定の割合で配合。
  2. 混合・粉砕:粉末材料を均一に混合・粉砕。
  3. 乾燥・造粒:造粒粉末を金型に充填し、プレス機を用いて所定の形状に成形。
  4. 予備焼結:成形体を低温で加熱し、強度を持たせる予備焼結を行います。
  5. 焼結:成形体を高温で焼結します。
  6. 仕上げ加工:必要に応じて研削や放電加工などの仕上げ加工を行います。

このような液相焼結法により、WC-TiC系超硬合金が製造されます。

WC-TiC系超硬合金の特徴

炭化チタン(TiC)を含有するWC-TiC系超硬合金の主な物性・特徴は、以下の通りです。

▼左右にスクロールできます。
耐酸化性の向上 炭化チタンの添加により、酸化に対する抵抗性が高まり、高温環境下での性能が向上します。
硬度と耐摩耗性の向上 炭化チタンは高い硬度を持ち、合金全体の硬度を高め耐摩耗性も向上します。
靭性の低下 TiCの添加量が増えると、合金の靭性(粘り強さ)が低下する傾向があります。
TiCの添加量は用途に応じて最適化する必要があります。

炭化チタンWC-TiC系超硬合金
と炭化タングステンの違い

炭化タングステンは超硬合金の主成分ですが、結合剤を添加することで超硬合金となります。WC-TiC系超硬合金は、炭化タングステンに炭化チタンを添加し、コバルトを結合相とする合金です。

炭化チタンを添加することにより、耐酸化性や耐摩耗性が向上するため、鋼材の高速切削や高温環境下での使用に適しています。

炭化チタン(TiC)のまとめ

炭化チタン(TiC)は高硬度と耐摩耗性の特性を持ちながらも、単独では用途が限定されることがあります。しかし、他の原料を適切に組み合わせることで、耐酸化性・硬度と耐摩耗性が向上した超硬合金を実現できます。

製品の特性に応じて原料の選択や比率の調整を行うことで、より高機能な部品設計を行えるでしょう。本メディアでは業種別におすすめの超硬合金メーカーを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

【業種別】超硬合金メーカー3選
大量生産に対応する 自動車部品・金型メーカー
向け
トーカロイ
トーカロイ
引用元:トーカロイ公式HP(https://www.tokaloy.co.jp/)  
高刃立ちの素材で、切断品質と
寿命を両立し大量生産に応える

超々微粒子構造と最大HRA95.0の高硬度設計により、大量生産を行う環境でも切削品質が長時間持続。工具交換頻度の抑制による高稼働で生産性向上が可能。

金型の寿命を約55倍、刃物の寿命を約100倍に改善(※)した実績があり、工具の交換頻度を軽減。

大型・重量部品を扱う 構造部品メーカー
向け
ノトアロイ
ノトアロイ
引用元:ノトアロイ公式HP(https://www.notoalloy.co.jp/)
重量・長尺の超硬部品にも対応する
大物加工の頼れる選択肢

外径φ500mm、長さ1,000mmに対応する大物超硬加工設備を備え、重量物や長尺・高荷重部品の加工をピンホールが除去された高品質で提供できる。

他社で断られることの多い、重機部品における金型の大型化・複雑形状に応える供給体制を整備。

非磁性・クリーン対応が必須な 医療・分析機器メーカー
向け
シルバーロイ
シルバーロイ
引用元:シルバーロイ公式HP(http://www.silveralloy.co.jp/jp/index.htm)
非磁性で高硬度・高強度を両立
磁場に左右されない精密超硬材

医療・電子・真空機器などで、非磁性かつ高硬度・高耐蝕性が必要な環境に対し、非磁性超硬合金を提供。

非磁性と塩分・化学薬品に対する高耐蝕性、HRA90.8・抗折力約4,400MPaの強度により、磁場干渉や薬液劣化を防ぎ、精密部品の高寿命化に寄与。

※参照元:トーカロイ公式HP(https://www.tokaloy.co.jp/proposal