超硬合金の3Dプリント技術が進展

超硬合金は優れた硬度や耐摩耗性を持つ一方、複雑形状への加工が難しい材料です。近年、3Dプリントによる積層造形技術を活用し、超硬合金部品を製造する研究が進められてきました。従来製法とは異なる新たなアプローチとして、今後の幅広い活用が期待されています。

超硬合金の3Dプリント技術が注目される背景

加工が難しい超硬合金を積層造形する研究が進む

超硬合金は、炭化タングステン(WC)とコバルト(Co)などの結合材から構成される材料であり、高い硬度や耐摩耗性を持つことから、切削工具や耐摩耗部品などに広く利用されてきました。一方で、その硬さゆえに加工の難易度が高く、複雑な形状の部品製造では加工工程やコストが課題になる場合があります。

こうした課題への対応策として、近年注目を集めているのが金属3Dプリント(Additive Manufacturing:AM)による超硬合金の成形技術です。特に、従来の加工方法では製造が難しい複雑な形状の実現や、材料の使用量を抑える手法として、積層造形の活用可能性が検討され始めました。

従来の粉末冶金による製造方法では、成形や加工に複数の工程を要するケースが少なくありません。それに対し、積層造形は3Dデータをもとに材料を直接積み重ねていくため、設計自由度を飛躍的に高められる点が大きな特徴といえます。

製造業の多様化により新しい加工方法が求められる

近年の製造業では、製品の小型化や高性能化、多品種化が進み、部品形状に対しても多様な要求が生まれるようになりました。とりわけ精密加工分野において、従来の加工方法だけでは実現が困難な形状や、少量生産向け部品への対応が急務となっています。

超硬合金は切削工具などを構成する重要な材料ですが、複雑形状の加工に際しては研削や放電加工といった追加工程を要する場合があります。そのため、不要な部分を削り落とすのではなく、必要な形状を直接形成する積層造形技術へ関心が集まるのは自然な流れでしょう。

もちろん、超硬合金の3Dプリント技術が既存の製造方法を完全に置き換えるわけではありません。それでも、従来工法では難しかった形状への対応や試作品開発の効率化をもたらす、新たな製造手段の一つとして研究が続けられています。

超硬合金3Dプリントの仕組みと技術動向

3Dプリントによる積層造形とは、3D CADデータをもとに材料を一層ずつ積み重ねて立体形状を作る製造方法のことです。一般的な切削加工が材料を「削って」形状を生み出すのに対し、積層造形は材料を「追加して」成形する点に大きな違いがあります。

超硬合金においては、WC-Coなどの粉末材料を利用した造形技術の研究が活発です。代表的なアプローチとして、粉末床溶融結合(PBF)や、成形後に脱脂・焼結を行う方式などが挙げられます。

ただし、超硬合金の材料特性上、造形時の温度変化や内部欠陥にいかに対応するかが極めて重要です。密度や組織状態の変化は硬度・耐摩耗性などの性能に直結するため、造形条件の最適化が絶えず研究課題とされています。

金属粉末などを利用して形状を形成する積層造形

3Dプリントによる積層造形は3D CADデータをもとに材料を一層ずつ積み重ねて立体を作る手法です。切削加工のように材料を削り取る工程が少ないため、形状設計の自由度を高めやすいという強みを持っています。

超硬合金の分野では、WC-Coなどの粉末材料を用いた造形技術が模索されてきました。粉末を配置したうえで熱エネルギーなどによって結合させ、目的の形状へと近づけていく仕組みです。

とはいえ、材料の特性を考慮すると、造形後に十分な密度を確保し、硬度や耐摩耗性といった本来の性能を維持しなければなりません。それを実現するため、粉末の粒径や成形条件、さらには焼結プロセスの微細な調整技術が鍵を握ります。

WC-Co系超硬合金の造形技術が発展

近年、WC-Co系超硬合金を対象とした積層造形技術の研究が進められてきました。粉末材料を利用した方式や、成形後に焼結工程を組み合わせる手法など、超硬合金の優れた特性を損なわずに造形するための技術開発が行われています。

中でも、バインダージェット方式をはじめとする「従来の粉末冶金技術と積層造形の融合」は、複雑形状の成形や材料特性の緻密な制御という観点から高い関心を集める領域です。

あわせて、レーザーを利用した造形技術についての検討も進んでおり、造形条件が微細構造や硬度に与える影響の評価が続けられています。超硬合金本来のスペックを維持しつつ、積層造形ならではの自由な形状設計をいかに両立させるかが、今後の大きなテーマとなるでしょう。

超硬合金3Dプリントが製造業にもたらす可能性

超硬合金3Dプリント技術の最大の強みは、従来の手法では製造工程が複雑になりがちな形状にも対応し得る点にあります。製造現場においては、設計自由度の向上や開発工程の効率化をもたらす革新的な技術として期待が寄せられています。

複雑形状の工具や部品開発への活用が期待される

すでにお伝えした通り、超硬合金3Dプリント技術は、従来加工において工程が複雑化しやすい形状への対応力を秘めています。例えば、工具内部の複雑な冷却構造や特殊な形状を持つ部品など、設計段階から積層造形を前提とした開発アプローチが検討され始めました。

さらに、試作品や少量生産品においては、金型製作にかかるリードタイムの大幅な削減が見込めます。設計変更が生じた際もデータの修正のみで対応しやすいため、開発サイクルの短縮に直結する技術として熱い視線が注がれているのです。

今後は品質安定化と実用化が重要になる

その一方で、超硬合金の3Dプリントには乗り越えるべきハードルも残されています。造形時に発生し得る空孔や亀裂、あるいは焼結時の収縮などを精緻に制御し、いかに安定した品質を確保するかが問われている段階です。

加えて、量産を視野に入れた場合は製造コストや生産速度の向上も欠かせません。そのため、現時点では従来の粉末冶金技術と積層造形技術を、それぞれの用途や目的に応じて適切に使い分ける方向で実用化の道が探られています。

まとめ

超硬合金は高い耐摩耗性を誇る反面、加工の難しさがネックとなる材料でした。しかし近年、3Dプリントによる積層造形技術の研究が進展したことで、複雑な形状の部品製造や工程の効率化に向けた道が拓かれつつあります。

現時点では品質の安定化や量産化といった課題が残るものの、超硬合金のポテンシャルを最大限に引き出す新しい製造方法として、今後の技術動向から目が離せません。

【業種別】超硬合金メーカー3選
大量生産に対応する 自動車部品・金型メーカー
向け
トーカロイ
トーカロイ
引用元:トーカロイ公式HP(https://www.tokaloy.co.jp/)  
高刃立ちの素材で、切断品質と
寿命を両立し大量生産に応える

超々微粒子構造と最大HRA95.0の高硬度設計により、大量生産を行う環境でも切削品質が長時間持続。工具交換頻度の抑制による高稼働で生産性向上が可能。

金型の寿命を約55倍、刃物の寿命を約100倍に改善(※)した実績があり、工具の交換頻度を軽減。

大型・重量部品を扱う 構造部品メーカー
向け
ノトアロイ
ノトアロイ
引用元:ノトアロイ公式HP(https://www.notoalloy.co.jp/)
重量・長尺の超硬部品にも対応する
大物加工の頼れる選択肢

外径φ500mm、長さ1,000mmに対応する大物超硬加工設備を備え、重量物や長尺・高荷重部品の加工をピンホールが除去された高品質で提供できる。

他社で断られることの多い、重機部品における金型の大型化・複雑形状に応える供給体制を整備。

非磁性・クリーン対応が必須な 医療・分析機器メーカー
向け
シルバーロイ
シルバーロイ
引用元:シルバーロイ公式HP(http://www.silveralloy.co.jp/jp/index.htm)
非磁性で高硬度・高強度を両立
磁場に左右されない精密超硬材

医療・電子・真空機器などで、非磁性かつ高硬度・高耐蝕性が必要な環境に対し、非磁性超硬合金を提供。

非磁性と塩分・化学薬品に対する高耐蝕性、HRA90.8・抗折力約4,400MPaの強度により、磁場干渉や薬液劣化を防ぎ、精密部品の高寿命化に寄与。

※参照元:トーカロイ公式HP(https://www.tokaloy.co.jp/proposal