過酷な加工条件下でも、長寿命を発揮する「超硬合金製の金型」。このページでは、超硬合金で作られる金型の概要から、導入メリット・デメリットまでをご紹介します。
超硬合金で作られる金型は、タングステン(WC)を主成分とし、コバルト(Co)を結合剤として高温で焼結した超硬合金を用いるのが一般的です。非常に高い硬度を持ち、金型用途として優れた耐摩耗性・耐衝撃性を発揮します。
冷間鍛造やプレス加工、精密打ち抜きなどの分野で多用され、製品精度を重視する自動車部品や電子機器製造において導入されています。
従来主流であったダイス鋼や高速度鋼に比べ、弾性変形が少なく、繰り返し荷重による摩耗にも強いため、寿命向上と歩留まり改善が期待されています。
超硬合金で製作することは、工具寿命の延長や加工精度の安定化といった明確な利点があります。一方で、コストや加工難易度などの導入ハードルも存在します。
ここでは、導入前に押さえておきたいメリット・デメリットをご紹介します。
1つ目のメリットは、耐摩耗性と高硬度です。数十万回単位の打ち抜き加工や高圧の焼結成形においても、摩耗や変形が少なく、金型の交換頻度を低減できます。生産ラインの停止リスクを抑制し、保守コストの削減にもつながります。
2つ目は、寸法精度の長期安定です。微細形状や精密公差が求められる製品において、安定した品質を長期間維持できるため、不良率の低下と品質トラブルの回避が可能となります。
高硬度素材や耐熱合金などの難削材に対しても適用可能なため、航空宇宙、医療、自動車業界など、特殊材料を扱う業種で効果を発揮します。
まず1つ目に挙げられるのが、高い初期コストです。素材価格が高価な上、加工自体も難易度が高く、製作費用は通常の工具鋼金型の数倍に達するケースもあります。
2つ目は、脆さによる破損リスクです。硬度は非常に高い一方で、衝撃や曲げ荷重には弱いため、不安定な加工条件や過大な負荷がかかると割れる可能性があります。
設計変更や再研磨への対応が難しいという点もあります。複雑な形状の変更には新たな型の製作が必要となることが多く、試作段階や多品種少量生産には不向きです。
超硬合金製金型は、「高精度」「長寿命」「高耐久」が必要とされる領域でこそ、真価を発揮します。
一方で、その性能を最大限に引き出すためには、課題に応じた金型が必要です。
本サイトでは、業種別によくある課題を解決できる超硬合金メーカーを紹介しているので、サプライヤー選定や課題解決の一助としてご活用ください。
用途や加工条件に応じて様々な「規格」が存在します。JIS規格(JIS B 4054:2020)では、超硬合金を以下の要素で分類されています。
超硬合金は、主に炭化タングステン粒子と結合剤(金属)から成ります。この結合剤の種類により、耐摩耗性・靭性・耐食性が変わります。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| V | バインダーレス |
| Co | コバルト |
| R | コバルト-ニッケル |
| N | ニッケル |
粒子の大きさによって、超硬合金の硬さ・靭性が変化します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| F | 超微粒(1.0μm未満) |
| M | 中粒(1.0μm以上2.5μm未満) |
| C | 粗粒(2.5μm以上5.0μm未満) |
| U | 超粗粒(5.0μm以上) |
硬さは摩耗しにくさに関係し、HRA値で表現されます。HRAの数値が高いほど、硬度の高さを示しています。
| 記号 | HRA範囲 |
|---|---|
| 10 | HRA 93以上 |
| 20 | HRA 92以上93未満 |
| 30 | HRA 91以上92未満 |
| 40 | HRA 89以上91未満 |
| 50 | HRA 87以上89未満 |
| 60 | HRA 85以上87未満 |
| 70 | HRA 82以上85未満 |
| 80 | HRA 82未満 |
※参照元:日本産業規格の簡易閲覧(https://kikakurui.com/b4/B4054-2020-01.html )
| ヘッダーダイス | ねじやボルトなどの冷間圧造用。高い圧縮応力に耐える必要があるため、超硬合金が適しています。 |
|---|---|
| パンチ | 打ち抜きや成形加工。超硬合金により長寿命化し、交換頻度が減少します。 |
| コールドフォーマー金型 | 冷間鍛造部品の成形。高い耐圧縮強度が求められ、製品精度を保ちながら金型の寿命を延ばせます。 |
| モールド金型 | セラミック粉末の成形型、粉末冶金金型など。微細で高精度な形状に対応可能です。 |
| 打ち抜き型 | 金属板の切断・打ち抜きに使用される金型。長寿命で高精度の切断面が得られます。 |
| ストレート・コンパクトダイス | 通常はルビーやダイヤモンドも使われるが、高負荷条件では超硬合金が選ばれます。 |
金型は、用途によって超硬合金の材種は変更することが重要です。本サイトでは、超硬合金の種類についても解説しているので、材料選定時の技術資料としてご参照ください。
加工に使用する際は、その高い硬度と優れた耐摩耗性を活かしつつ、割れや欠けを防ぐために、慎重な加工条件の設定が求められます。
| 工具の選定 | ダイヤモンド工具、またはコーティング工具の使用 |
|---|---|
| 切削速度(Vc) | 被削材の硬度により調整。低速に設定し、熱の発生と工具摩耗を抑制します。 |
| 送り速度と切り込み量 | 素材への負荷を抑えます。 |
| 冷却と潤滑 | 切削油を使用。適切な冷却方法を選択し、工具と素材の温度上昇を防ぎます。 |
| 加工方法の選択 | 放電加工や研削加工の活用。 |
既製品の超硬合金金型を購入し加工する場合、即納が可能な上に比較的コストを抑えることが可能です。
製造を依頼する場合、使用目的や材料に合わせて設計されるため、加工の設定が容易であり加工効率も高まります。
難削材や高精度が求められる加工では、オーダーメイドの工具が効果的です。依頼をする場合、超硬加工の実績が豊富で、高精度な加工設備を持つメーカーに相談することをお勧めします。
引用元:トーカロイ公式HP(https://www.tokaloy.co.jp/)
引用元:ノトアロイ公式HP(https://www.notoalloy.co.jp/)
引用元:シルバーロイ公式HP(http://www.silveralloy.co.jp/jp/index.htm)