超硬工具を使用するにあたって、避けて通れないのが「摩耗」です。超硬工具が摩耗する原因は一つではありません。機械的、熱的、化学的な要因が複雑に絡み合って発生します。
本ページでは、超硬工具が摩耗する原因とその解決策、および摩耗を抑制するためのポイントについて解説します。
切削工具が摩耗する主因は大きく二つあります。
一つ目は、切削熱とワークとの摩擦で発生する「フランク摩耗」です。刃先の後面がすり減って工具の有効長が短くなると、刃先が本来の位置よりも内側を削るようになり、加工後の穴径や溝幅に想定外のズレが生じます。
二つ目は、刃先温度が約1,000℃に達することで起こる「クレーター摩耗」です。工具材と被削材が化学反応・拡散を起こし、すくい面にくぼみが形成されます。
対策の第一歩は、摩耗形態を確認して原因を特定することです。フランク摩耗が原因であれば、切削速度を10〜15%下げたり、耐摩耗性に優れたAlTiNコーティングを選んだりすることが有用です。
クレーター摩耗が顕著な場合は、高温強度に優れたTiCN系材種を採用し、高圧クーラントで刃先温度を抑制することで、拡散反応の発生を低減できます。
摩耗した刃先では、スムーズな切削ができません。切削抵抗や切削温度が急激に上昇すると、加工中にびびり振動が発生しやすくなるため、加工品質の悪化や工具の早期劣化につながります。
刃先が丸まれば切れ味が低下し、寸法誤差や表面粗さのばらつきが拡大します。
リスクが高いのは、摩耗限界に達した工具が作業中に破損することです。高速回転中に工具が欠けたり折れたりすると破片が飛散し、加工中のワークや高価な工作機械に損傷を与えかねません。飛散した破片は作業者に危害を加える可能性もあります。
工具の摩耗限界を正しく把握し、交換・再研磨を計画的に実施することは、品質管理や安全確保に加え、トータルコストの削減にも繋がります。
摩耗を抑えるためにやるべきことは、切削条件の適正化です。工具に過度な負荷を掛けないよう、メーカー提示の切削速度・送り量を確認し、被削材や機械剛性に合わせて調整します。刃先温度を下げる高圧内部給油の活用や、びびり振動を抑制する高剛性の工具ホルダを使用することも有効です。
それでも摩耗が改善しない場合には、製品の素材自体を変更する必要があります。
本サイトでは、業種別でおすすめの超硬合金メーカーを紹介していますので、ご参照ください。
加工条件と被削材に合った工具を選ぶと、摩耗速度は大幅に下がります。工具選びの際に考えるべきポイントは3つあります。
まずは、母材となる「超硬合金の性質」の選定です。連続切削なら硬度重視、断続切削や衝撃が大きい加工なら靭性重視の材種を選ぶことで摩耗を防げます。
次に注目したいのが「コーティング」です。コーティング(PVD、CVDなど)や膜種(TiN、TiCN、AlTiNなど)の種類によって、硬度・耐熱性・潤滑性・耐酸化性が変化します。
例えば、PVDコーティングは高温強度と潤滑性を高めるのに役立ち、CVDコーティングは優れた耐摩耗性を持つのが特長です。
被膜は、鋼材加工向けではAlTiNやTiNが高い硬度・耐熱性を発揮し、鋳鉄加工ではTiCNが優れた耐摩耗性を示します。
被削材と切削速度に合わせたコーティングおよび被膜を選定することで、刃先温度を低下させ、拡散摩耗を抑制できます。
さらに、「工具の形状」も重要です。切りくず排出を助けるチップブレーカやコーナーのR寸法の設定は、摩耗のしやすさに直結します。
超硬工具の摩耗は、加工精度悪化、機械損傷、コスト増大など、多くの問題を引き起こします。摩耗の原因は様々ですが、基本的には加工条件と被削材に合った工具を選び、負荷を適正化した切削条件に設定することで、摩耗の進行を抑制可能です。
しかし、それでも摩耗頻度が依然として高い場合には、工具が加工条件に適合していない可能性があります。その場合は、工具の買い替えを検討してください。
工具買い替えの際には、メーカー選びが重要です。本サイトでは、超硬合金メーカーの一覧を掲載しているので、ご活用ください。
引用元:トーカロイ公式HP(https://www.tokaloy.co.jp/)
引用元:ノトアロイ公式HP(https://www.notoalloy.co.jp/)
引用元:シルバーロイ公式HP(http://www.silveralloy.co.jp/jp/index.htm)